06|現職による町長選挙街頭演説の検証
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まとめ
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2022年4月5日午後4時前後に新町屋台パークで行われた、大塚朋之・益子町長選挙立候補者による街頭演説の中の、財政力指数に関した発言箇所を検証しました。
以下の引用箇所の下線部 (1) ~ (4) をみると、あいまいな比較からの結論づけ(1)、論理の飛躍 (2) 、事実の誤認 (3) 、根拠のない断定 (4) で、正しい根拠に基づかない箇所を含んだ街頭演説であったとわかりました。
特に (3) に対して、公の場で事実と異なることを町民へ訴えた点、ならびに事実誤認に基づく政策立案・公約が行われている点を重大な問題として指摘します。
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演説内容を部分引用し、検証した箇所を下線で示しました (録音データより書き起こし) 。
出典: 大塚朋之・益子町長選挙立候補者による街頭演説、新町屋台パーク、2022/04/05
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本編
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1: 演説内容の確認2: 演説内容の問題
1: 演説内容の確認
1ページに引用した発言箇所の下線部(1) ~ (4) について、順を追って検証していきます。
(1) 「結論からいえば、益子の財政は全国的にいえば中の中の上です」
財政力の豊かさを示す財政力指数は、益子町の場合令和2年度が0.555で、同じ年の全国の市町村の平均0.51を上回ります。
しかし、全国の市町村の財政状況は、さまざまです。そのため、総務省は地方公共団体の規模別に財政力指数の平均値を確かめ、公開しています。
出典: 「令和3年度版 (2018) 地方財政の状況 (地方財政白書) 総務省、2020年
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/hakusyo/chihou/R3hakusyo.html
上の表で人口21,376人 (2022年4月1日現在) の益子町が属する「町村 (人口1万人以上) 」の財政力指数は平均0.55で、益子町の0.555はこれを上回ります。しかし、それより上の欄にある中都市以上の財政力指数は、益子町の値をはっきりと上回ります。
(2) 「財政力指数といって、稼ぐ力がこの町にはあります」
財政力指数*は、財政上必要な通常の支出に対する、自治体が自前でまかなえる収入の割合をいう財政指標です。直接「稼ぐ力」とは、結びつきません。
* 出典: 内務省|指標の説明|財政力指数
https://www.soumu.go.jp/main_content/000264701.pdf
(3) 栃木県の県内総生産は、確か、神奈川県より高く全国3、4位 (要約)
誤りです。神奈川県の県内総生産は全国4位、栃木県は同14位です。また、神奈川県の県内総生産は、栃木県分の約3.8倍あります**。さらに、栃木県の県内総生産のうち、益子町の町内総生産は約5.7%に過ぎず***、栃木県内全体で見て事業所の生産活動の結果が比較的優良としても「稼ぐ力がこの町にはあります」とは断定できません。
** 出典: 内閣府|県民経済計算 (平成18-30年度)|
統計表|総括表
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/main_2018.html
以下2点のExcelファイルより平成30年度の値を参照。
1. 県内総生産 (生産側、名目)
2. 県内総生産 (生産側、実質)
*** 出典: 栃木県「平成30 (2018) 年度とちぎの市町村民経済計算 (概要) 」2021年、3頁
https://www.pref.tochigi.lg.jp/c04/pref/toukei/toukei/documents/h30shityousonmingaiyou.pdf
以下、くわしくみていきます。演説は、町の財政力指数の話題に続いて県の財政力指数にふれず、県内総生産の比較に転じていました。演説内容は、政府が公表する最新 (平成30年度) の都道府県別地方財政状況調査結果と異なります。栃木県の県内総生産は、名目GDP、実質GDPとも全国14位で、それぞれ約9兆3748億2600万円、約9兆819億2000万円です。神奈川県の名目GDP、実質GDPはともに全国4位で、それぞれ約35兆7170億6900万円、約34兆6815億1200万円です。神奈川県の県内総生産は、栃木県の約3.8倍あります。
また、同じく平成30年度の栃木県資料によれば、益子町の総生産 (名目GDP) は約534億4800万円で、栃木県の総生産約9兆3748億2600万円の約5.7%を占めているに過ぎません。この値は、県内25市町中23位となっています。
(4) 「全国より稼ぐ力は上だ」
以上、(1) ~ (3) をみてきてわかるように、(1)があいまい、(2)が論理の飛躍、(3)が事実誤認です。発言に根拠がありません。
2: 演説内容の問題
現職が2022年4月5日に新町屋台パークで行った街頭演説の、益子町の財政力指数についての言及から始まる箇所を検証しました。
1ページの引用箇所の下線部 (1) ~ (4) の根拠を確認したところ、あいまいな比較からの結論づけ(1)、論理の飛躍 (2) 、事実の誤認 (3) 、根拠のない断定 (4) から構成された、正しい根拠に基づかない箇所を含んだ街頭演説であったことがわかりました。
特に (3) に対して、公の場で事実と異なることを町民へ訴えた点、ならびに事実誤認に基づく政策立案・公約が行われている点を重大な問題として指摘します。
なお、益子町の財政状況については、本ブログの以下の記事にまとめてあります。合わせてご覧ください。 (以上、文責 廣瀬俊介)
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02|益子町の財政を客観的にみる
https://mashiko-mirailab.blogspot.com/2022/03/023.html

